上海にいた元同僚が、某国首都に来た時、空を見上げて言っていた一言「それにしても某国には、野生の鳥がいませんよね!特に上海では烏も雀も見ません」だった。「おいおい・・そう感じるかもしれないが、全く居ない事は無いと思うよ」そう返事した。

 某国はとても大きな国であるから、首都北京や上海だけを見て某国全体を語ってはいけないが、首都や上海、天津でも野生の鳥に関しては種類も数も少ないのは確かである。山歩きをしてもカッコウや鶯の声を聴いたことが殆どない。日本であれだけ覇権を握るカラスさえも滅多に見ない。雀を時々見るが、それより多いのはカササギという比較的大柄の鳥である。白黒の2色で鳥のパンダ版みたいな存在。尾が長いが翅は短くあまり長距離は飛べない。つまり渡り鳥ではない。日本にも九州の一部に生息しているそうであるが、人の手によって運びこまれたそうである。関東地域では見ない種類だ。

 この鳥、地方の農村では害鳥扱いで捕まれば”焼き鳥の刑”となるが、首都周辺では保護鳥として大事に扱われているので 結構権勢を誇って、あちこちで見かける。ポプラの木に巣をつくるが、冬になって葉が落ちるとカササギの巣だけが枝に取り残され目立つ存在となる。一時、某国の国鳥候補にもなったようだが、朝鮮が先に国鳥の位を授けてしまったので、今更国鳥にもできないらしい・・・カラスが天敵らしいが、頭がよく飛行能力にも優れたカラスがいないので「鳥のいない郷の蝙蝠」的繁栄を謳歌している。

 でも雀さえ日本に比べても少なく感じるのは何故だろうか・・・大躍進時代、政府の命令で農作物を荒らす害鳥として雀は、3日間で40万羽も殺され姿を消したらしい。燕と同様、子育ての時期に害虫を食ってくれる雀を絶滅寸前まで退治してしまったつけは、害虫の大発生と言う形で跳ね返ってきた。飢饉が重なり飢えで多くの人が死んでから「雀さん カムバック!」と言っても後の祭りである。困った挙句、当時のソビエト連邦から大量の雀を輸入して害虫駆除の為、首都や周辺農村に放ったというから、某国首都の雀は某国空軍のSu‐27と同様ロシア製らしいのである。何千年も農業国家として経験を積んできたはずなのに浅はかな事をしたものである。

 某国つい最近まで、空を飛んでいるものは飛行機以外何でも食べる民族と言われていた。法律で規制しなければ、直ぐに食用として取り尽くしてしまうのでカラスも生きていけなかったのかもしれない。

 話が飛んでしまうが、取り尽くされてめったにお目に掛れない生物がもう一種ある。日本では田園地帯や湿地帯ならどこにでも見かけるカエルがそうだ。ところが某国首都並び周辺都市でその鳴き声を聞くことは皆無に近い。私の住む街にも沢山の湿地帯があるが、カエルの声を聴かない。青カエルと言うのが昔は沢山生息していたらしいが、食用としてほぼ採り尽くされすっかり姿を消したそうだ。食用の牛蛙も店には生きたまま並べてあるが養殖物である。少なくとも某国首都周辺の自然界では大きな用水池があってもその声を聴くことは滅多にない。モーモー鳴いたら最後、捕まって食べ尽くされてしまうからに他ならない。但し、ガマガエルだけは食用にできないらしく時々闊歩している姿を見かける。

 私の昔の運転手君、ある時保冷バック一杯にの皮を剥いた青カエルをもらったそうで、こっそりバックの中身を私に見せてくれた。中には皮をむかれた可哀そうなカエルのご遺体が沢山並んでいたが。彼曰く「これは今、保護動物に指定されているので見つかったら捕まえた方も買った方も刑務所行きです。でも美味いですよ!!」だそうである。カエルが保護動物になるのは、雀と同じ蚊やその他害虫を食ってくれるからであるが、大躍進時代の失敗が全く現代に生かされていないのよね・・・まったく。

 蛇も人前に現れたら最後、食用となってしまう。会社の研修会で自然豊かな高原のホテルに泊まっていた時、周辺を散策していた数人の男達は蛇を見つけたらしく、すぐ皮をむいて持ち帰っていった。これじゃ蛇君も「ちょっとお散歩」ですら危なくて出来やしない。

 春節、寺院などに参拝に行くと小さな鳥籠にギッシリ押し込まれた哀れな鳥達(ムクドリや雀)を見かける、並べた鳥籠の横にいる輩は、この鳥を売っているのではなく“お金を払って、空に逃がしてやる行為“を売っているのである。日本でも白いハトを葬儀で放つ「放鳥の儀」と言うのがあるが、某国のは完全な「偽善行為の販売」である。金を払って空に放たれた鳥に「俺は正月から良い行為をした」などと自己満足する脳の足りんの連中が多いので、こう言う悪商売が蔓延するのだ。この手の商売が続けば、春節前に捕鳥用のカスミにひっかかって命を失う鳥も多くなる。

 そんなこんなで鳥も安心してお空を飛べない某国、カササギと偶に見かけるロシア製の雀以外、あまり鳥に出くわす事が無いのが、首都周辺の日常なのである。海辺に行けばカモメや海鳥は見ることができるが、鴨や雁など美味しそうな種類は飛んでいないようだ。某国人も流石に蝙蝠は食用にしないようで、これは夕方になると良く飛んでいる、でも鳥ではない。日本の鳥君たち!ニッポンが如何に住みやすい国か分るかな・・・

 某国は食に満ち溢れ、何でも金さえあれば食べれるようになって、動物保護の精神にも目覚めるようになって来た。それ故、これから先は野鳥の種類や数も増えていくのだろうが、農村では保護鳥カササギでさえ”焼き鳥の刑”になるのだから、鳥君達、まだまだ油断はできないよ。                                   (2017年7月記)

ボクの某国論
其の三十一 自由に飛べない鳥たちの巻    
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